森繁和さん、2009年頃の「世代交代」の難しさを語る

■2025.11.17 スポーツナビ

3年連続V逸…過渡期だった2009年の落合ドラゴンズ　「WBCボイコット騒動」の真相とは？


簡単にはいかない世代交代
　2年続けて優勝も日本シリーズ出場も逃したこの年のオフ、翌シーズンから私がヘッドコーチになることが決まった。チームとしても過渡期に来ていたし、自分がヘッドコーチになってそこを乗り越えることが責務だと思っていたのもある。だが一番に考えたのはヘッドコーチになれば自分で責任を取れるということだった。投手陣の成績が悪ければ投手コーチが辞めれば済むかもしれないが、チームの成績が悪ければ責任が監督にいく可能性がある。だが代わりにヘッドコーチが責任を取れば落合さんに責任を取らせないで済むかもしれない。それなら自分がヘッドコーチになっても良いというか、そうしなければいけないのではないか、そういう時期になっているのではないかと考えたのだ。

　この年も主力連中の年齢が上がってきており、勝ち続けながら「世代交代」も考えていかないといけないという課題に変わりはなかった。落合さんは2011年までの契約だから、あと2年間、勝利に徹して若手のことは考えないというやり方もある。だけど落合さんだって私だって優勝すれば2011年以降も契約延長の道が開けてくると思っていたし、当然その先を見越すならば世代交代を避けるわけにはいかない。この年も含めて最後の3年間はそんな時期でもあった。

　難しいのは「主力が30代後半だから代わりに若手を使う」という単純な話ではないということだ。〝若い〞という理由だけで実力が劣る選手にレギュラーポジションを与えて我慢して使う考えは落合さんの頭にはない。毎年優勝争いをしているチームに「今年1年は我慢して若手を使う」という考えももちろんない。結局はその若手を鍛え、自分でポジションを奪わないといけないのだ。だが若い堂上直倫にしても二遊間には荒木と井端がいて、福田永将もサードには森野がいてファーストにはブランコがいる。いくら鍛えたとしても簡単にポジションを渡してくれる連中ではなかった。世代交代も簡単ではなかった。

　若手とベテランの間がすっぽり空いているような状態を埋めるべく、ドラフトでは高校生よりも即戦力の野手が欲しいという希望はやっぱり現場としてはあった。1位、2位はチーム編成上高校生投手の指名になったが3巡目以降は大学生と社会人の野手と捕手を五人獲った。そのうちの一人、5位で日本生命から入ってきたのが外野手の大島洋平だった。大島は1年目から100試合以上に出場を果たし、即戦力としての期待に応えてくれた。これで懸念だったセンターのポジションが埋まった。なお、この年のオフは「金庫に金がない」という状態だったので、大きな戦力補強はなかった。若手を含めた現有戦力を上手く鍛えながら、ベテランのケツを叩きながらやるしかない。そう覚悟を決め、4年ぶりのリーグ優勝に向けて動き出すことになった。

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当時のことを振り返りました。

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