中日・中田翔、5月13日に登録抹消となった直後に記者へ伝えていたこと「腰が駄目やったら…」

■2025.08.15 中日スポーツ

中日、中田翔、「話そうや」5月に記者が聞いた「腰が駄目やったら…」切り出した引退「最後は野球を好きになって終わりたい」


　はっきりと覚えている。5月13日に出場選手登録抹消になった直後のことだった。ナゴヤ球場。会うなり中田から「話そうや」と言われた。こういうときのイヤな予感だけは当たる。この抹消は12日に豊橋に向かうバスで腰痛が再発したことが要因だった。誰もいないところに行くと静かに切り出した。

　「腰が駄目やったら、もう引退する。今の気持ちは6割そっち。ちょっと良くなっても去年はすぐぶり返したし。オカンにもそう言った」。広島に住む母親・香織さんにもそう伝えたという。記者が初めて取材したのはルーキーイヤーの2008年。いつか終わりがくるということは頭では分かっていても、実感がわいたことがなかった。いきなり現実を突きつけられたような気がして、言葉が出てこなかった。

　今季に野球人生を懸けると言ってきた。オフに昨季苦しんだ腰痛対策で15キロ減量。「めっちゃキツかった。走りまくったし、帰ってからは交代浴5セットくらいやってたし、食事もめちゃくちゃ管理したし」。そこからグルテンフリーにも取り組み、さらに減量した。やれることは全部やる。体重は90キロ台中盤まで落ちていた。

　1カ月後、ファームに復帰した。「完治はないから、どこかで踏ん切りをつけてやるしかない。らちが明かないし、シーズンが終わってしまう。やってもうできなくなったら、それはそれで仕方ない」。だましだましやりながらでも数字は残った。そして、8月7日に1軍に昇格。そのとき、気持ちは固まっていた。自分で自分のことは決めた。安定しない腰の状態は直後に逆戻りした。

　「今年はやりたいように調整もやらせてもらって、この成績は正直キツい。腰も良くならない。これ以上チームに迷惑掛けるわけにはいかない」。当たり前にできていたことができない。掛けた労力に結果が見合わない。その事実が重しのように胸に沈んでいった。「正直、ここのところずっとキツかった。最後は野球を好きになって終わりたい」。偽らざる本音だろう。だからこそ、最後にもう一度見てみたい。中田らしいド派手な放物線を―。 （土屋善文）

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