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「今中?誰や?どこの高校や?」「大阪桐蔭?そんな高校聞いたことないぞ」 “無名高校”の今中慎二さんをドラフト指名するまでの流れ

今中慎二

■スポーツナビ 野球編集部(@sn_baseball_jp)さん / Twitter











■2023.11.25 スポーツナビ

強固だった現場とスカウトの信頼関係 今中と大豊をW獲りした星野仙一の剛腕


「今中?誰や?どこの高校や?」
 私は球団が「大豊1位」で行く方針は知っていたが、それでも春先に行われたスカウト会議で「このピッチャーが一番良いと思います!」と、スカウト部長の田村さんに無名高校の選手の指名を進言した。そのピッチャーこそ、後に沢村賞も獲得する、90年代の中日を支えた左腕、今中慎二だ。
 
 今でこそ「大阪桐蔭」という名前は、野球界に響き渡っているが、当時は前身の大阪産業大学高校大東校舎から校名が変わったばかり。今中はそんな無名校の一期生だった。
 
 私はその後もしつこく今中を推し続け、田村さんも「じゃあ一回見にいこう」と、春のオープン戦を一緒に見てもらえることになった。
 
 今中のボールを見て驚いた。一冬を越えて球威が一気に増していたのだ。右バッターのインコースにもビュンビュン投げ込む。制球力もボールのキレも申し分がない。

「このピッチャーすごいわ……」。田村さんも唸った。続けてこう言った。

「今年の候補のなかでは一番かもしらんな。ひょっとしたら1位でいくかもわからん。頭に入れておいてくれ」
 
 田村さんは一目見て今中に惚れ込んだ。私はそれが嬉しかった。だが大豊の1位指名は既定路線。今中と大豊、2人獲ることなどできるのだろうか。そんな不安が頭をよぎった。
 
 やがてナゴヤ球場で試合前の星野さんと話す機会があった。

「どうじゃ?今年は良いのがようけぇおるだろ」

 星野さんは独自のネットワークから、毎年有望な選手の情報を大体把握されていた。

「大阪に今中というとんでもない左ピッチャーがおるんです」

「今中?誰や?どこの高校や?」

 さすがの星野さんも春の時点では今中の情報までは持っていなかった。

「大阪桐蔭?そんな高校聞いたことないぞ」
 
 そこから一通り学校の説明と今中について熱く語ったのだが「そんなもん2位か3位で獲れるやろ」と言われてしまった。だが私には今中の評価がこれから絶対に上がるという確信があったので食い下がった。「その順位で獲ることは難しいと思います」と、暗に今中の1位指名を進言した。星野さんは舌打ち交じりに「勝手なことばかり言いやがって!」と吐き捨てた。それはそうだろう。星野さんは全権監督として前年から大豊の1位指名を想定していたのだから。
 
 夏の大阪大会前、案の定、今中の評判は球界に知れ渡っていた。もはや1位でないと獲れないことは明白だった。それは星野さんの耳にも当然届いていた。
 
 この頃になると、スカウト内に当初はあった、川崎憲次郎(津久見高‐ヤクルト1位)、前田幸長(福岡第一高‐ロッテ1位)、篠田淳(大垣商業高‐ダイエー1位)などを推す声も聞かれなくなり、いつしか「1位は今中でいきたい」が、スカウト部の総意のようになっていた。

 迎えた夏の大阪大会初戦。私は球場に着くなり二軍総合コーチの新宅洋志さんに声をかけられた。星野さんに命じられて今中を視察にきたのだという。新宅さんは、試合前のブルペン投球を遠くから見ただけで、「なんや⁉ あんな(軽い投げ方)であんなにボールがいくんか!?」と早くも前のめりになっていた。
 
 この日の今中のピッチングは手元の伸び、コントロール共に申し分なかった。新宅さんも興奮気味にこう言った。

「このピッチャー強烈やな。久々にこんなすごいピッチャー見たわ」
 
 新宅さんは陰で星野さんのことを「おっさん」と呼んでいたのだが、「これはいいわ。おっさんにもそう報告しておくわ。やっぱりお前らスカウトが『良い!』というのもよくわかるわ」。そう言って球場を後にした。
 
 現場とスカウトが尊重し合い、互いの意見に耳を傾け、良いものは良いと素直に認める。星野監督就任後、現場とスカウトにはそんな風通しの良さ、空気が出来上がっていた。
 
 ちなみに、大阪桐蔭高はこの試合に敗れて初戦敗退。今中には申し訳ないがそれも中日にとっては好都合だった。甲子園に出ていれば間違いなく騒がれ、1位指名競合は必至だったからだ。


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当時のドラフト指名経緯を明かしました。

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